第1回 折上稲荷神社──女性守護のお稲荷さま

 山科についてご紹介していく「山科めぐり」。今回は、弊社のすぐ近くにある折上稲荷神社の宮司さんにお話を聞いてきました。


最古の稲荷神社


▲稲荷塚の写真。長年信仰されてきた結果、登ってみるとところせましと史跡が集まっている。

 日本各地に広くみられる稲荷信仰のおおもとは、有名な伏見稲荷大社だと言われています。
 じつは、その伏見稲荷大社と同時に創建されたと言われている神社が山科にあるんです。それが折上稲荷神社です。
 創建は奈良時代の711年。伏見稲荷大社の奥宮(同じ神を祀りながら、地形の関係から三九郎社。脇から本殿を守っている本宮から離れた山の頂上や山中にある神社)として奉斉されたと伝えられています(※1)。
 祭神は倉稲魂神 (ウカノミタマノカミ)ほか二柱。いわゆる稲荷大神です。もともとは1500年前から人々のあいだで信仰の対象だった「塚」に、稲荷大神が降りてこられた、と言われています。この「塚」は古墳時代につくられたものと考えられており、「中臣十三塚古墳群」と呼ばれる古墳群のうち現存する2墳の一方です(※2)。
 社名の由来には諸説ありますが、神様が降りてきたから「降り神」だ、という説もあるそうです。


働く女性の守り神

▲本殿。女性芸能人や実業家がお忍びで来られることもあるという。

 稲荷神はもともとは五穀豊穣をつかさどる神ですが、近世以降に各種の産業が発展していくに従って、次第に商売繁盛にもご利益があるとされるものとされてきました。
 ここ折上稲荷神社は、「織り神」に通じることから、とくに織物の関係者から人気があったようです。歴史上に名を残してこそいないものの、たしかに西陣織を支えてきた女性たちがよくお参りに来られたとか。
 江戸時代ころには宮中の女官たちからご利益は「折り紙」つきだとして評判だったようです。
そのいわれから、現在では仕事をしている女性、働く女性の守り神として知られています。就職試験前に来られる女性もいらっしゃるとか。
 女性の守り神の由縁から、6月にある折上稲荷祭では、女性も神輿を担ぐことが許されているそうです。これは京都の神社のなかでめったにないことです。

三九郎稲荷社

▲三九郎社。脇から本殿を守っている。

 稲荷といえば狐というイメージがあります。一説によるとこれは、稲荷大神の別名である御饌神(ミケツカミ)が三狐神(ミケツカミ)と書き当てられたことから来ています。
 折上稲荷神社にはまさに三匹の狐を祀っている「三九郎稲荷神社」という境内社があります。人間が生きるうえでの三大苦労──人間関係・健康・お金を除いてくれると言われています。
 
▲本殿前の狛犬。稲荷神社では狐のいることが多いが、折上稲荷神社では狐が別に祀られているために本殿前には狛犬が座っている。

 

稲荷きつね折り上げ守

▲稲荷きつね折り上げお守り。前かけの色は風水に応じて毎年変わるとか。

 折上稲荷神社に来る人に人気なのが、「稲荷きつね折り上げお守り」です。最近は神社のお守りといえば袋のお守りが多いですが、伝統的な紙のお守りです。
 宮司さんが一枚一枚手づくりして、一つ一つに江戸時代からある神様の印を押しているとか。たくさん注文が来ると生産が間に合わないので、TVの取材も断っているという限定品です。
 インターネットから郵送も受け付けており、全国から発注があります(こちらから)。働く女性へのプレゼントとして買う人もいらっしゃるとか。

※1)『日本の神仏の辞典』(2001)大修館書店

※2)ふるさとの良さを活かしたまちづくりを進める会(2019)『京都山科中臣遺跡』


折上稲荷神社Webサイト:https://origami-inari.jp/

2020年03月09日